【感想】DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー
「女神転生のシリーズで一番楽しく遊べてるかも...。」
今作を20時間ほど遊んだときにふと、そう思いました。
インド神話・仏教の思想を取り入れた物語や設定は、陰惨な演出や描写を交えて、妖しくも魅力的。
キャラごとに特性を出すことも、揃えて極めることもできる自由な育成システム。
弱点を突き、弱点を守ることで有利に立つ戦闘システム。
トライヴ同士の抗争という泥臭い展開から、徐々に違う面を見せ始めるシナリオ。
その全てが自分の好みに突き刺さり、自分が遊んだことのある女神転生シリーズの作品群ではトップクラスにハマりました。
今回はその「DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー」の感想を書きたいと思います。
良い点、(良くも悪くもない点)、悪い点を書いています。
今回は良くも悪くもない点はありません。
良い点
自由な育成システム
女神転生シリーズといえば、説得することで仲魔を増やし、それらを合成することでより強い仲魔をどんどん作る仲魔システムが有名です。
合成元の仲魔から受け継ぐスキルを厳選したりして、より自分好みの仲魔を作るのが醍醐味なのですが、自分はこの仲魔システムがちょっと苦手です。
というより、こういったモンスター育成が苦手なんです。
同じ理由でポケモンやドラクエモンスターズ等も得意ではないですね。
モンスターズなんて特に、配合ありきのシステムですし。
なので女神転生シリーズは楽しくプレイしながらも、仲魔については攻略情報を見させていただきあまり悩まないようにしていました。
そこで悩むのが面白さでもあるのでしょうが、頑張って作った仲魔がとても弱くてすぐ使わなくなるのも悲しいです。
そんな自分でも悩まずプレイできるのが今作。
(実際はどう育成するか、という違う面で悩むのですが)
仲魔システムは無く、むしろ主人公たちが悪魔になってしまう今作は成長システムが主人公たちにしかありません。
そして、レベルアップとは別に「マントラ」と呼ばれるスキルが覚えられるプログラムを習得することで、主人公たちを強くしていきます。
この「マントラ」。キャラごとに初期状態の違いこそあれ取得できる「マントラ」に差はないので最終的には全員がすべてのスキルを覚えている状態にすることができます。
つまり、キャラごとに個性を出して対応できる敵を分けても良いですし、全員にまんべんなく有用スキルを覚えさせることもできるのです。
これが自分にハマりました。
戦ったら戦った分だけスキルを覚えて強くなる様子を見るのはとてもやりがいがありました。
戦闘中に使えるスキルは覚えた中から選ぶので、どのキャラにどんなスキルを持たせようか考えるのがとても楽しかったです。
仲魔と違って覚えられないスキルは無いので、覚えてなかったら「マントラ」を取得してスキルを覚えに行けるのがストレスフリーでしたね。
その分時間はかかりますが。
自分はストーリー攻略中は、各キャラの弱点を補うスキルを優先させて、あとはキャラごとに役割を与えてそれを中心にスキルを覚えさせました。
クリアしてからは全員に全スキルを覚えさせようとのんびりプレイしています。
(先に続編をプレイしているので、まだ先になりそうですが)
自分には不向きだった仲魔ではなく、こうした育成システムだったのは今作を楽しめた大きな要因です。
弱点を中心に回る戦闘システム
ATLUSの戦闘と言えば弱点を利用したもの。
もうほとんどのATLUS製RPGに言えることです。
今作もその例に漏れず相手の弱点を突くことが大切なのですが、そこに「ウェイトスキル」が加わったことでより戦略性が増しています。
今作では戦闘参加人数分の行動権が敵/味方に与えられており、その行動権を消費することで行動することができます。
そして弱点を突いた際、そのパーティは行動権が消費されずに、もう一度だけ追加行動をすることができます。
なのでどんどん弱点を突けば、その分追加の行動ができて有利になるんですね。
「ウェイトスキル」は次のターンの属性属性の攻撃を無効化・反射・吸収するスキルで、属性攻撃が無効化・反射・吸収されると、その行動をしたパーティの行動権はその分追加消費されてしまい、全体攻撃を無効化なんてされた時にはそのまま行動が相手に移ってしまいます。
なので、弱点を抱えたキャラが自軍にいて、相手がその属性で攻撃できるとき、「ウェイトスキル」を使って相手の行動権を無駄消費させれば、弱点も突かれず、相手の強力な攻撃をスキップすることもでき有利になります。
これが楽しい。
もちろんこれは相手も使用可能なので、相手の弱点が分かっても「ウェイトスキル」を使ってくるならまた別の戦略を立てたり、「ウェイトスキル」ばかり使う種類の敵がいれば優先的に倒したりと戦い方に幅も出てきます。
これが属性攻撃だけではなく、状態異常にも適用されるのでさらに考えることが増える。
面倒でもあり、でもそれが楽しいです。
徐々に色がついていくシナリオ
主人公サーフたちが住む世界、ジャンクヤードでは複数のトライヴというグループに分かれて日々抗争が繰り広げられています。
その目的は一つ、全てのトライヴを倒しニルヴァーナと呼ばれる場所へ行くこと。
そのために色を宿さない目で戦い続けるサーフたちだったが...。
このようなあらすじで始まる今作。
文字通りサーフ達はくすんだ目で機械的に戦いを繰り広げています。
楽しい、苦しい、悔しい、憎い、そんな感情も抱かず淡々と戦う姿が描かれるのを見て、
「なるほど、今作はこういう描写で進むのか」
と始めは思っていました。
しかし、セラという異分子の登場。
そしてサーフ達に宿る悪魔の力。
悪魔の力を得たサーフ達は、それによって皮肉にも人の心をも得ます。目に色を灯しながら。
この展開がとてもアツかったですね。
悪魔の力を得て、これで他のトライヴと存分に戦えると思ったら人の心をも得たことで苦悩するんです。
悪魔として生き延びるためには人を喰わなくてはいけない。それは果たして正しいのか?
色を取り戻したからこそ進むことを躊躇ってしまう人の心。
悪魔の力と人の心を得たサーフ達が出した答えとセラの正体に迫る終盤はノンストップでプレイし続けていました。
連作なので今作だけでは全貌は分からないのです。
それでも問題なく面白かったですが、すぐ次回作をプレイしたくなりましたね。
自分は、元々サーフ達は人で、何らかの理由でジャンクヤードに人間性を奪われて閉じ込められている。
そしてかつて知り合いだったセラが助けに来て...。
というお話だと思っていたのですが、次回作をやるとそうではなかったと分かって驚きました。
サーフ達は人間性を取り戻したのではなく...。
真実は次回作の2で。
悪い点
高いエンカウント率
少し古いゲームには付き物なところはありますが、今作のランダムエンカウント率は高いと思います。
育成のためには戦う必要があるとはいえ、戦闘後1歩歩いたらエンカウントはさすがに間隔短すぎです。
ファミコンくらいのレトロゲームにしかないと思っていましたよ、1歩エンカウント。
ダンジョンも先に進むためのギミックが散りばめられており、解くのは楽しいのですがエンカウントがどんどん煩わしくなっていきます。
ATLUS製RPGの例に漏れず強い敵はこちらを一瞬で葬ってくるので、高いエンカウントと敵との激戦で疲れることもしばしば。
育成中はむしろエンカウントしたいのでこれでもいいかと思っていたのですが、どんどん気になるようになってきたのでマイナスに感じてしまいました。
中盤からは自分より弱い敵を出さないようにする道具を常に使用していました。
もしかしたら、シンボルエンカウントやエンカウント率操作できる最近のゲームに慣れてしまっただけかもしれませんが...。
最後に
タイトルだけは聞いたことがあったので、「折角PS2も動くんだしプレイしよう」と軽い気持ちで手を出した今作でしたが、箱を開けてみれば「女神転生シリーズで一番楽しいかも」とすら思える作品に。
本家「女神転生」シリーズのような仲魔に焦点を置いた作品も楽しいのですが、このような外伝的作品も是非今後も出してほしいですね。
もしくは、「真・女神転生Ⅲ」のようなリマスターや最近の「Nier Replicant」のようなバージョンアップでも嬉しいです。
ATLUSといえば「ペルソナ」シリーズも人気ですが、ポップな「ペルソナ」とはまた違ったちょっとダークな「アバタールチューナー」も嗜みにいかがでしょうか。
それでは、今回はここまで。
PS:音楽も素晴らしいものが揃っていることを書いておきます。
ただ、サントラがもう廃盤になっていて手に入りづらいようです...。
配信か再販していただけたら絶対に買います。
ボス戦の曲が格好いいんです。