【サントラ感想】Xenosaga Original Soundtrack
2021年に入り、最初にクリアしたRPGシリーズはゼノサーガシリーズでした。
自分の中の、PS2のRPGで遊びたいものランキングで上位にいるシリーズでしたので、無事クリアできてホッとしております。
そして、楽しいシリーズでした。
全3部作の本シリーズですが、1作目は「クロノトリガー」「ゼノギアス」でも有名な光田康典、2,3作目は数々のアニメ、映画の等の音楽を担当している梶浦由紀がコンポーザーを務めています。
作曲スタイルの違いから、1作目と2,3作目で音楽の雰囲気が変わってしまうのは仕方のないことですが、それでもそれぞれで「ゼノサーガ」を表現した素晴らしい音楽が展開されています。
今回はその中の1作目。
「ゼノサーガ エピソードⅠ [力への意志]」のサウンドトラックを見ていきたいと思います。
表紙からも分かる通り、このサントラはゲームのイメージを使用していないデザインになっています。
惑星の画像や誰だか分からない人が散りばめられているだけで、知らない人が見たらこれをゲームのサントラとは思えないような作りになっています。
こういった作りでもゼノサーガの雰囲気に合っていて、全く問題ないと思えるのは、このタイトルが持つ他とは一線を画した壮大さが理由になっているのは間違いないです。
ディスクは2枚組。
黒一色に白文字が書かれており、落ち着いたデザインです。
赤と青を基調としたパッケージとの差が際立ちます。
サントラの魅力は、いつでも自分の気にいったゲーム音楽が聞けることはもちろんライナーノーツを読むことで、このタイトルの音楽に少し踏み入ることができることにもあると思っています。
本サントラにもライナーノーツがあり、作曲者の光田康典、ゲームディレクターの高橋哲哉、ボーカルのJoanne Hoggからのメッセージを読むことができます。
これを読むと分かるのは、本作の作曲で光田氏はかなり苦悩したということ。
ゲームのスケールの大きさのさることながら、フルオーケストラの作曲・編曲が初めての経験であったことから、不安にかられ、一度は挫折したことが書かれています。
しかし、逃げずに最後までやり切ったことで自分に自信が持てたとあります。
「自分に自信をつけるには、失敗を繰り返すこと」
ゼノサーガの登場人物たちにも当てはまるこの言葉を念頭に置いておくと、このサントラの曲をまた違う視点で楽しめるかもしれません。
また、曲一つ一つに光田氏のコメントが付いています。
聞く側としては、こういったコメントは本当に嬉しいです。
コメントを読みながら曲を聞いていると、曲に込められた光田氏の想いが分かる気がします。
では、このサントラの曲で自分が気にいっているトラックをいくつか挙げてみます。
沢山あるのですが、絞り込んでみました。
Disc1 002.Opening
KOS-MOSの起動実験から始まる本作ですが、その様子が描かれているときに流れる曲です。
壮大な話が始まることを予感させる、まさにオープニングな曲となっています。
オーケストラだけでなく、電子音も使用しているのが科学技術の発展したゼノサーガシリーズらしさが出ていると思います。
最初にこのゲームを起動したとき、PS2の調子が悪くてこのムービーがうまく流れず、PS2を調整しながら何回もオープニングを見ていたので、そういった意味でも印象に残っている曲です...(笑)。
3:09くらいからのバイオリンが好き。
Disc1 003.Battle
このゲームをプレイした人ならば、絶対に頭に残っているであろう曲です。
光田氏もコメントしていますが、このゲームの戦闘曲はこの曲とラスボスの曲の2つしかありません。
様々な事情があったようですが、最終的にはこの構成にして良かったとあります。
個人的にはボス曲が欲しかったような気がしないでもないですが、ゼノサーガの戦闘曲といったらこの曲!と定義付けができる意味で、これで良かったとも思います。
Disc2 002.Nephilim
ゲーム内でも重要な立ち位置にいるネピリムの曲です。
ピアノが中心の曲は自分のお気に入りになりがちなのですが、この曲はネピリムの持つ妖しさと繊細さが本当に上手く表現されています。
コメントによると、楽器を別々に録音したにもかかわらず、ぴったりと息があっていたそうです。
【今週の一曲】シリーズにも取り上げさせていただきました。
Disc2 017.Last Battle
2つしかない戦闘曲の片割れ、ラストバトルの曲です。
ラスボス曲とは思えないほどゆったりしたリズムで、ピアノとバイオリンが綺麗な曲なのですが、得体のしれない敵を思わせるメロディが最後を思わせる、不思議な曲です。
この曲への光田氏のコメントが印象的です。
「世の中は複雑に流れ、そして繋がっているのです。」
Disc2 020.Kokoro
ゲームの最後に流れる曲、エンディングの曲です。
この曲はボーカルのJoanne Hoggも気にいっていたとあります。
自分の語彙力ではこの曲の魅力は上手く伝えられないのですが、光田康典の曲だ!と強く感じる曲ですよね...。
コメントによると、主人公シオンのテーマのつもりで作曲されたようで、なるほど歌詞も亡くなったケビンへ向けたシオンの想いが綴られています。
しかし、エピソードⅡ以降のシオンへ降りかかる運命を思うと、何とも言えない気持ちになります。
輝きの中のあなたはいつも笑顔
その笑顔に応えたくて
あの日から強くなろうと決めた
あなたが私に遺してくれたもの
勇気をもらったから
ちなみにこのサントラ、一度廃盤になったあと、追加楽曲を携えて再販されたという過去があります。
今回紹介したのは廃盤になったほうで、再販版は持っていません。
追加楽曲も気になるので、見かけたら是非買いたいですね。
パッケージも変わっていて、再販版のそれも良いデザインです。
ライナーノーツのゲームディレクター高橋哲哉氏のコメントにこんなものがありました。
「絵が音楽に負けている」
ゲームの容量が上がれば映像の質も上がる。
しかし、その分音楽もできることが増えてゲーム内での比重が増えていってしまう。
そんな時、絵が音楽に負けていると感じるとのことです。
ゼノサーガはそんな音楽に支えられながら完成すると予感していた高橋氏ですが、サントラにもある「Gnosis」という曲とそれが流れるシーンを合わせたとき、示し合わせたようにマッチした絵と音楽に驚愕したそうです。
絵が先を行くのでもなく、音楽が先を行くのでもなく、共に歩調を合わせたゲームなっている。
自分は「ゼノサーガ エピソードⅠ」にそんな印象を持ちました。
絵も音楽も、現世代機はとても質の高いものになっています。
しかし、どんなに綺麗なグラフィックよりも、どんなに壮大なオーケストラよりも、そうやって歩調を合わせたゲームにこそ魅力があると、そう思います。
それでは、今回はここまで。